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ベクトルデータベースを理解しよう

RAGや、AIに自分や、自社のデータを扱わせることの意味や、正しい方法を理解できるように裏側の知識を学ぼう

AIを支える意味検索技術の仕組みを解説

今回は、最近よく耳にするベクトルデータベースについて、その仕組みから実用性まで詳しく説明していきたいと思います。これは現在のAI技術を支える重要な基盤技術の一つですが、なかなか理解しづらい概念でもあります。

ベクトルとは何か?

まず基本的な概念から始めましょう。ベクトルとは、数学的には矢印で表現されるもので、原点から特定の座標点への方向と大きさを持つものです。例えば、2次元空間でのベクトル(a, b)は、x軸にa、y軸にbの位置を指す矢印として表現できます。

しかし、私たちがベクトルデータベースで扱うベクトルは、もっと抽象的なものです。数学的な抽象化を進めると、原点からスタートする矢印であれば、その終点の座標だけで情報を表現できます。つまり、ベクトルとは複数の数字で表される一つの点と考えることができます。

言葉をベクトルで表現する仕組み

では、どのようにして言葉や文章をベクトルとして表現するのでしょうか。これを理解するために、具体例で考えてみましょう。

例えば、「犬」という言葉を空間上のある一点に配置したとします。次に「猫」を配置する際、犬との関係性を考慮してある程度近い位置に置きます。さらに「狼」を配置する場合、犬により近い位置に、「ライオン」は猫により近い位置に配置するでしょう。

このように、言葉同士の関係性を空間上の距離で表現することで、意味的な近さを数値化できるのです。しかし、実際の言葉の関係は非常に複雑で、2次元や3次元では表現しきれません。

高次元空間の必要性

現実の言葉の関係性を適切に表現するためには、はるかに高い次元数が必要です。現在のAI技術では、1つの言葉を1500次元以上のベクトルとして表現することが一般的です。

なぜそれほど多くの次元が必要なのでしょうか。私が作成した図で説明すると、犬と狼はDNA的には非常に近い関係にありますが、人間との親密度で考えると犬と猫の方が近くなります。2次元では、この両方の関係性を同時に表現することは困難です。

しかし、3次元空間にすることで、見る角度によって異なる関係性を表現できるようになります。これを1500次元まで拡張すれば、1つの言葉に対して1500の異なる側面から捉えることが可能になるのです。

LLMとテキストエンベッディング

では、この高次元ベクトルはどのように作られるのでしょうか。これが**大規模言語モデル(LLM)**の重要な機能の一つです。

LLMは大量のテキストデータを学習する過程で、各言葉が文脈の中でどのように使われているかを分析します。この情報を基に、言葉同士の関係性を最適に表現できるような高次元空間上の座標を自動的に決定していきます。

この技術をテキストエンベッディングと呼びます。つまり、任意の文章を入力すると、その文章の意味を表現する高次元ベクトルが出力される仕組みです。そして、ベクトル同士の距離を計算することで、文章の意味的な類似度を数値化できるようになります。

ベクトルデータベースの実用性

この技術の実用的な価値は、意味による検索が可能になることです。従来のキーワード検索とは異なり、完全に同じ単語が含まれていなくても、意味的に関連する文書を見つけることができます。

例えば、「今日は快晴で気持ちよい天気だった。素晴らしい散歩をしていたら良い気晴らしができた」という文章と「めっちゃ晴れてる」という短い文章は、文字列としては全く異なりますが、ベクトル空間では意味的に近い位置に配置されます。

Pineconeを使った実装例

私が実際に使用しているPineconeというベクトルデータベースサービスでは、以下のような流れで処理されています:

  1. OpenAIのテキストエンベッディングAPIで文章をベクトルに変換

  2. そのベクトルをPineconeに保存(メタデータも併せて保存)

  3. 検索時は、検索クエリをベクトルに変換し、近いベクトルを検索

  4. 関連する文書を意味的な類似度順に取得

実際のベクトルデータを見ると、1500個の小数点以下10桁までの数値が並んでいて、この組み合わせの数は天文学的な数になります。この広大な空間により、長い文章も短い文章も適切に表現できるのです。

RAG技術への応用

この技術は**RAG(Retrieval-Augmented Generation)**と呼ばれる手法で活用されています。ユーザーの質問をベクトルに変換し、関連する文書を意味検索で取得して、その情報を基にAIが回答を生成する仕組みです。

重要なのは、これが単なるキーワード検索ではなく、意味による検索だということです。社内でRAGシステムを導入する際は、この点を確認することが重要です。単純な商品ID検索などではキーワード検索で十分ですが、知識労働においては意味検索が必須となります。

AIの進化の方向性

現在のAI技術の発展を見ると、AIが自ら問題解決の方法を考え、適切な知識や道具を選択する能力に重点が置かれています。知識については、雑多な情報を詰め込むより、厳選された知識をベースとした学習の方が性能向上につながることが分かってきています。

そして、実際の業務で活用するためには、ユーザーからの情報提供が不可欠です。この情報提供の仕組みとして、RAGによる知識検索や、ツールユーザージ(ファンクションコーリング)による外部システムとの連携が重要になっています。

今後の展望

私自身も、toiee Labのコンテンツを全て読み込ませた検索システムを構築予定です。また、個人が自分のベクトルデータベースを構築できるオープンソースプロジェクトも検討しています。

このような技術により、AIを意識せずにAIを活用する環境がより一般的になっていくでしょう。まるでパートナーのように便利で、自然にサポートしてくれるAIシステムが実現されていくと考えています。

意味検索技術とベクトルデータベースは、この未来を支える重要な基盤技術として、今後さらに重要性を増していくことは間違いありません。

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