今日は「趣味とは何か?」について、考えてみましょう。
あなたが学生で就職活動をしているなら履歴書に「趣味」を書くと思います。今日の議論を深めておけば、面接で趣味について尋ねられた時、他の学生たちとは違って、あなたらしい回答ができると思います。
是非、楽しんで、読んでください。
趣味とは何か?
趣味とは「人生を豊かにしてくれるもの」だったり、趣味とは「手段と目的が入れ替わったもの」などと表現されることがあります。
私は、以下のように定義しています。
「趣味とは、手段と目的が入れ替わり、フロー状態になっているもの」
この観点について、以下では議論していきます。
サウナで、考えてみよう
コロナ禍の時は、キャンプが流行りました。大手キャンプ用品メーカーが急成長し、時の企業になり、書籍や特集が組まれました。今は、その過剰な熱がおさまり、中古品市場に、高価なキャンプ用品が数多く出品されているそうです。
キャンプ用品を売りに出して、辞めてしまった人たちは「キャンプを趣味」に、できていたのでしょうか?
キャンプの次に流行っているのが「サウナ」らしいです。サウナに足繁く通ったり、大自然の中に用意されたサウナに入りに行く人たちは、「サウナが趣味」と言って良いのでしょうか?
もしかしたら、しばらくサウナ熱に浸った後、次は「地ビール」に流れていくかもしれません。
このように、コロコロ変わるものは「趣味」として、取り組んでいると言えるでしょうか?(もちろん、ケチをつけるつもりはありません。個人の自由です)
消費という視点で考えてみよう
キャンプや、サウナを「消費」という視点で考えてみると面白いです。
経済学では、「消費とは、欲求を満たすために商品・サービスを購入、使用する行為」 です。消費の反対は「生産」となります。つまり消費とは、「欲求を得るための手段」です。
もし、キャンプを消費として行なっているのであれば、
高いキャンプ用品を揃えて、ワクワクする
キャンプ場で、調理したり、泊まって、景色を見る
満足する
終わり
となります。
つまり「非日常」を得るために、キャンプ用品やキャンプ場を「消費(使った)」わけです。あくまでも目的は「非日常を体験すること」で、手段として「キャンプ」を使っただけです。
別の言い方をすれば、「非日常を体験できれば、キャンプでなくても良い」です。例えば、サウナでも良いのです。
家のお風呂とは違って、高温多湿、檜の匂い、野外、薬草の香りなどによって「非日常」を感じることができれば、OKです。
ところが「非日常」は、繰り返されると、非日常ではなくなります。結果、飽きます。
次の「非日常体験」が欲しくなります。もしかしたら次は、地ビール巡りかもしれません。あるいは、スポーツ自転車に乗って、非日常を体験することかもしれません。
趣味は、手段が目的になっている
一方で、ずっとキャンプにハマる人がいます。あるいは、キャンプに「凝っている」人がいます。他人から見たら、「飽きもせず、よくやるなー」と思われています。
こう言われている場合、彼ら、彼女らは「趣味」と言える気がします。彼らの心境は、こんな感じでしょう。
非日常を味わうことも楽しいけど、そもそも「キャンブが好き」で「キャンプが、ただただしたい」
「キャンプを楽しくするためは、山奥に行くしかない」 と考えているかもしれません。
キャンプが趣味になっている人は、どんな状況でもキャンプが楽しいでしょう。例えば、雨が降ってしまっても、「たまには雨もいいかー」「この状況で、どんなことができるだろうか?」と考えたりします。
あるいは、キャンプ道具を次々と買い替えるのではなく、用途別に細かい使い分けを考えたり、別の使い方、新しい使い方を考えたりします。人によっては「キャンプの歴史」に精通する人もいます。
つまり「キャンプをする」が目的で、手段として「どこかに行くだけ」です。とにかく、キャンプそのものが嬉しい状態で、あれこれやっています。キャンプに行く理由を、常に考えている状態が趣味と言えるでしょう。
プログラミングが趣味の人は(学生時代の私です)、プログラミングをしたいから「作るものを探す」という状態でした。作りたいものがあって、プログラミングをしているのではありません。もちろん、スタートは「作りたいもの」があって、プログラミングをし始めましたが、そのうち「プログラミング自体が、もう楽しい」となりました。
ポイントは、 「行為そのものが、報酬になっている」 ことです。これは、チクセント・ミハイのいう「フロー状態を作る要素」の一つです。
フロー状態とは、行為に没頭し(つまり、マインドフルネスです)、幸福感を感じている状態のことです。
そして「行為そのものが報酬になっている」ことに加えて、もう一つ重要な要素が必要です。それは、 「チャレンジとスキルのバランス」 です。
没頭する趣味と、「チャレンジとスキルのバランス」
趣味は、とても個人的な営みです。誰かに強制されて、行うものではありません。自分から、能動的に行います。行為そのものが「楽しい」のが趣味です。
行為そのものが「ワクワク」するには、どうしたら良いか?というと、フロー理論で有名な以下の図がヒントになります。
現在のスキルに合わせた、ちょうど良い(ちょっと難しい)チャレンジ(課題)をすることです。
趣味は、上司から強制された達成目標はありません。自分で目標を決めることができます。「限界にチャレンジしてみよう」と、ぼんやりした目標でもOKです。あるいは、退屈してきたから、もうちょっと難しいことをしてみよう!と考えます。
あるいは、難しいことにチャレンジしたら、ストレスがかかります。失敗したり、危険な思いをすることもあります。その場合、「もうちょっと、レベルを落とそう」と考えたりします。
これのように、趣味は、ちょうど良い「チャレンジ」を設定しやすい です。
趣味は、「小さいレベルアップ」が続く
ちょうど良いチャレンジとは、「今のスキルより、ちょっと上」です。これを繰り返していると何が起こるでしょうか?
「スキルがアップ」します。
すると、だんだん物足りなくなります。結果、次のチャレンジを設定します。キャンプであれば、なんとなく「もやい結び」をしてただけのところを、もっと早く、美しく、整えるなどにチャレンジするでしょう(キャンプをしないので、想像です)。
あるいは、他のロープの結び方や、テントを立てるプロセスなどを工夫して、素早く、美しくを目指すことになります。
趣味は「行為そのものが目的」で、その行為を楽しむために、目標を少しずつ上げていきます。結果として、継続的にスキルがアップします。
もちろん、スキルだけでなく「知識」を増やすことも、楽しみを増やすことになります。より難しい知識を獲得しようとすると、苦労します。それが楽しさ(フロー状態)を作り出してくれます。
これが「趣味」です。
まとめ
趣味は「行為そのもの」が目的です。何かを行った結果の報酬は、二の次です。そして、行為そのものが「報酬」になるのは、フロー状態が生まれるからです。フロー状態の時は、幸福を感じます。結果として「行為 = 報酬」となります。
フロー状態を作るには、スキルとチャレンジのちょうど良いバランスを取る必要があります。少しだけ難しい課題に取り組むこと、新しいことに取り組むこと、知らないことを知ろうとすることで「ちょうど良いチャレンジ」になります。
スキル(知識、技能、新しい発見を含む)は、チャレンジを繰り返す中で、伸びていきます。スキルを落とすことはできませんので、チャレンジレベルを上げていくことになります。
その結果、「マニアック」や「よくやるなー」と言われてしまう領域に到達します。
これが「趣味」の定義です。消費と比較すると、かなり違いますよね?消費は、「固定された目的、欲求」を得るための手段の行使です。必ず飽きてきます。結果、別の消費が必要となります。そして、あまり内面の変化は起きていないので、次々と別の消費を必要とします。
趣味は「内面の変化」の要因が大きいです。
学校教育がやっていることは?
ところで、学校教育について考えてみましょう。多くの教育関係者は、「自発的に学ぶ」教育を目指しています。また、「発展的に学ぶ」教育を目指すべきだと言っています。
ところが、実際は真逆のことをしています。
学校側が決めた到達目標を押し付ける
学校側が決めた課題を押し付ける
自分の成長よりも、周りとの比較(あるいは平均との比較)
などです。これでは、趣味に取り組んでいるときに起こるようなことが、何一つ起こりません。学ぶ楽しさも、味わえないでしょう。
趣味にヒントを得て、趣味のように「学ぶ」環境づくりや、関わり方(ラーニング・ファシリテーション)をすると、違ってくると思います。
また、仕事も同じです。
上司から強制された達成目標、ノルマ、方法を押し付ければ、多くの社員は「エンゲージメントが低く」「成長が遅く」「発展的に学ばず」「自主的に行動しない」状態になります。
趣味の構造を、今一度考えてみると、いろんなヒントが得られると思います。
追伸
次回は「コーヒーという趣味」について、あれこれ書きたいと思います。コーヒーは飲み物です。飲むだけのコーヒーは、消費対象でしかないように思いますよね?
でも、「趣味」になります。
その不思議(?)な関係を深掘りすることで、趣味の構造を考えてみたいと思います。それと同時に、コーヒーを趣味にする人を増やしたいと思っています。なぜなら、私がコーヒーが趣味だからです。同類、仲間を増やそうとしています。
次回もお楽しみに!
追伸2:
今回のコラムで、面白かったこと、気づき、発見などありましたら「いいね!」「コメント」をお願いします。コメントを見ると、やる気が起きます!!
なお、個人的に感想を送っていただいても構いません。全て読ませていただきます。
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この趣味の定義に当てはまる、あなたの趣味はなんですか?
僕は、「スキー」「ゴルフ」「ウィンドサーフィン」「コーヒー」「ロードバイク」です。スキー、ゴルフ、ウィンドサーフィンは、子供が生まれてからは、やってませんが。
「消費」という線引きが、しっくりきた。消費ではなく趣味が長続きするし、生活を豊かにするなと感じました。