文化とは何か?を複雑系の科学や、システムの視点から考えてみる
複雑系の科学が明らかにした生命システムが持つ構造の1つ、階層構造におけるボトムアップと、フィードバックによる創発現象で、文化を捉えてみる
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前回(文化とは何か?言葉から考えてみる)に引き続き、私たちが「文化」と気軽に読んでいる、これについて、あれこれ考えてみましょう。今日は、複雑系の科学という視点から考えてみたいと思います。
特に、経営者や、マネジャーは「複雑系の科学」を知っておくと、文化に対してだけでなく、会社全体のマネジメントや、ティール組織や、学習する組織、変化していける組織を構築する手助けになります。
複雑系の科学は、さまざまな分野に影響を与えた
複雑系の科学とは、科学史の中では新しい分野です。量子力学のように、特定の分野として残っているというよりは、この「複雑系」と呼ばれる現象の知見が、さまざまな分野に影響を及ぼしました。
あとで説明する「多数の構成要素による相互作用」や「創発」「自己組織化」などの概念は、社会学、物理学、生物学、経済学など、多数の科学分野に影響を与えました。
しかも、その与え方は「パラダイムシフト」と呼べるものもあります。大幅な考え方の変更を余儀なくさせることもあります。
最近では、「経営学」や「マネジメント」に対しても、大きな影響を与えています。ティール組織の「生命的メタファー」は、まさに複雑系の科学そのものです。
なお、このWeb寺子屋とは別に行なっているプロジェクトである「toiee Lab(トイラボ)」では、人の学習(ラーニング)を研究し、教え方、授業の仕方、チームビルディングなどの方法論を構築しています。
このtoiee Labの学習に関する知見は、教育学(主に行動心理学に近いものや、倫理に近いものが多い)ではなく、複雑系の科学が由来です。
興味がある人は、
をどうぞ。
複雑系の科学の重要キーワードを「図で」理解する
ここで説明する「図」を頭に入れた上で、「文化」を定義すれば、かなり腑に落ちると思います。
言い換えると、 複雑系の科学の基本的な構造で、文化を見るとよく言い表せられる ということです。
私は、大学で研究者として「知性」と呼べるものの断片を、コンピューターアルゴリズムとして実現し、何らかの問題を解かせる「インテリジェント・コンピューティングの応用」に取り組んでいました。
私が取り組んでいた「広い意味での人工知能」は、どちらかというと「複雑系の科学」の世界の知見に基づいています。
研究活動の中で、「複雑系の科学」のことを説明する機会が多かったので、以下のような図を作って説明してきました(もう、20年近く前の話です)。
この図でポイントとなるのが、以下の5つです。
構成要素(図解の黒い点) : 全体を構成する複数の構成要素があり、それらが 相互作用 している状態にあります
相互作用 : 構成要素の相互作用があります。相互作用は、一方的なものではなく、お互いに影響しあうことや、複数の構成要素間で複雑な影響の仕方をすることがあります
ボトムアップ : 複数の構成要素の相互作用が「より大きな何かを生み出します。これを「創発」と呼びます。
フィードバック : 構成要素同士で生み出した全体は、構成要素に影響を与えます。これをフィードバックと呼びます。
階層構造 : 構成要素という下部層があり、それらが集まって合計以上の何かを生み出す「全体」という上部構造があります。このようなものを階層構造と呼びます
ちょっと、難しい部分が多々ありますが、生命システムそのものなので、細胞や内臓、脳に当てはめれば、よくわかります。
例えば、私たちの脳は「1000億近くの神経細胞がある」と言われています。さらに、1つ1つの神経細胞は、数千から数万の他の神経細胞とネットワークを組んでいると言われています。
頭がクラクラ(笑)する数ですが、それらは単純な反応(とはいえ、非線形です)しかしません。ところが、これらが集まると「猫」の顔を見ると、一定のパターンで反応を起こします。さらに、他の部分が集まって、言語野などと連携し「猫」と認識します。さらに、猫を何度も見ることで、脳神経細胞の反応スピードや、効率や、ネットワークが変化します。
つまり、部分は全体を構成し、全体は部分に影響を与えています。
これらの構造は「複雑適応系」とも呼ばれています。何にせよ、あまり難しく考えず、シンプルに
部分の相互作用が、全体を作る
全体は部分の相互作用に影響を及ぼす(部分にも)
その反応の連続によって、何かしらの状態を維持したり、変化を引き起こす
というように理解してください。
文化を「複雑系の科学の図」で捉える
複雑系の科学の基本構造で文化を捉えていましょう。
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