あなたは、「本を読めている、読めていない」や「効果的な読書」を、どのような指標で評価していますか?
多くの場合、以下の2つの指標です。
読書の量
読書からの成果
このどちらでもない「別の指標(第3の指標)」を頼りに、読書の仕方を工夫したり、本に向き合えば、私たちは、「もっと本(あるいは著者)から、多くを受け取る」ことができます。
ここでは、その指標について、一緒に考えたいと思います。
読書量という指標
例えば、小学校の夏休みの宿題で定番の「読書カード」には、”できれば、10冊以上読みましょう”と書いてあります。この時の指標は「冊数」です。10冊読んだら、読書している、できていることにするという単純明快な指標です。
速読に興味がある人は、1分間に「平均何文字を処理したか?」を指標にして、読書しているかもしれません。あるいは、毎月25冊、年間300冊以上を目標にして、多読を目指している人や、憧れているかもしれません。
私が出会った速読マスターの方々の一部は、「年間300冊読んでいます!」と、誇らしげに語っていました。それを否定するつもりはありませんが、私が手に持っていたP.F.ドラッカーの「マネジメント(上)」をみて、
「それ、読みやすいですよね」
と言われて、ギョッとしました。
マネジメントは、上・中・下の三部作になっており、ドラッカーの幅広い知見が、ぎっしり詰まっています。さらっと書かれている事例などを調べると、たくさんのことが学べます。人類史にまで学びが広がるぐらい、深い本です。
このような本が「さらっと読める、読みやすい」と言われて、私は違和感を感じました。
次々と、新しい本を読むことも大事ですが、1冊1冊と丁寧に向き合うことによって得られるものを、見落としているんじゃないか?と疑問に思いました。
冊数にこだわるあまり、もしかしたら「学ぶ楽しさ」や「読むことを通じて得られる世界の広がり」を十分に得られていないかもしれません。
読書からの「成果」で測る
上記のような「読むスピード」や「読んだ冊数」にこだわっている人たちを批判的に捉える方々の一部は、
読んだだけでは、意味がない
仕事に活かさないと、意味がない
行動につながる読書をしないと、意味がない
と主張する考えもあります。
つまり、読書したことから「どれだけリターンを得られたか?」で、読書を測ろうというものです。
このような目的を追求し過ぎると、もしかしたら「今の知識や、前提は何も変わらず、とりあえず行動する」ということになるかもしれません。あるいは、「ハウツー本をメインで読む生活」になるかもしれません。
そうなると、例えば「Humankind」という素晴らしい本などは価値がないと思ってしまうかもしれません。なぜなら、2冊に及ぶ上、すぐにできる行動はありません。しかし、私たちの世界の見方を変えてくれて、社会への希望をもち、貢献したい!という気持ちを起こさせてくれる、素晴らしい本です。
このような本を見落としかねないのが「成果を指標とした読書」です。
「内面の豊かさを広げる」という指標
速度を重視することや、行動を重視する読書は、1つの手段です。それが良い時もあれば、悪い時もあります。
大切なのは、「オプション」を持つことです。
上記の2つとは、大きく発想が異なる「指標」で、取り入れてもらうと、
読書がもっと楽しく、豊かになる
と、私は確信しています。
その指標とは、「内面の豊かさ」を広げるというものです。
数えることもできなし、グラフにすることもできません。しかし、確実に感じることができる指標です。
例えば、たった1ページを何度も読み返し、過去の経験を振り返り、さまざまな知識と結びつけ、そして涙したとします。この時、私たちの脳内(あるいは、身体知も関係するかもしれません)の神経ネットワークのあちこちが活性化し、新しいつながりが生まれています。
量で見れば、たかだか1ページです。行動も、すぐには起こしていません。
しかし、長期的に見れば、人生に大きなインパクトを与えます。もちろん、知識が深くなったことで、今後の読書のスピードにも影響を与えることになります。
なぜなら、サーーと表面を撫でるような読書では、読書スピードのボトルネックである「意味解釈」のスピードは上がりませんが、深く読書することで、この意味解釈の力が確実に上がるため、結果としてスピードが上がります。
同様に、深く理解したことは、さまざまな行動に反映されると思います。
つまり、「内面の豊かさ」に注意を向け、それを向上させるような読書を目指すことで、結果として「スピード」も「成果」もついてくると思います。
読書が楽しくなる
スピード、成果を直接求めることよりも、まず大切にしたいことは、「読書を楽しむこと」です。
私たち人間は、学ぶことを楽しむ動物です。イルカなども、「遊び=学び」をします。これと同様に、私たちは、新しいことに触れ、自分の内面のネットワークを複雑にし、豊かにすることに喜びを感じます。
私は、子供たちには「冊数なんか気にせず、好きな本を読もう」と伝えていますし、学校の宿題の冊数を気にしないようにしています。
息子は、小学生のとき、なぜだか「小林一三(阪急電鉄グループの創業者)」に興味を持ち、夏休みは、その本をひたすら読んでいました。結果、2冊しか本は読みませんでした(もう1つは、ビジョナリーカンパニー2です)。
でも、立派な読書だと思いますし、それで良いと思っています。なぜなら、彼は、阪急電車を経営、イノベーション、社会を豊かにする、エンターテイメント、不動産などの視点から見るようなレンズを持ったからです。
冊数や、成果にこだわらず「内面を豊かに」することを目指しませんか?
「内面を豊かにするためには、どう読書を工夫したら良いか?」と考えながら、あれこれ読書をすると、新しい発見や、アプローチが見つかると思います。
是非、試してみてください。
きっと、新しい世界が見えると思います。
もしよかったら、「冊数」や「成果」にこだわらず「内面の豊かさを増やす」という指標のもとに作った「Enjoy Reading講座」を試してみてください。読書が、もっと楽しいものに変わると思います。